肥後神楽について
神楽(かぐら)は、神道のお祭りや神事において神様に奉納するために奏される歌舞のことです。 古事記や日本書紀で、アマテラスオオミカミが天の岩戸にお隠れになったとき、アメノウズメノミコトが神懸りして舞ったという神話が神楽の起源であるとされています。 「かぐら」の語源は、「神座」(かむくら・かみくら)が転じたものとする説が一般的です。神座とは「神の宿るところ」「招魂・鎮魂を行う場所」を意味し、神座に神々を降ろし、巫・巫女が集まった人々の穢れを祓ったり、神懸かりとなって神の意志を伝えたり、また人の側からは願望が伝えられるなど、神人一体の宴を催す場であり、そこでの歌舞が神楽と呼ばれるようになったと考えられています。 神楽は、宮中で行われる御神楽(みかぐら)と、民間で行われる里神楽(さとかぐら)に分けられます。一般的にいう神楽は里神楽のことです。 全国には多くの神楽がありますが、その一つが熊本県に伝わっている肥後神楽です。
肥後神楽(ひごかぐら)
肥後神楽は熊本県の主に北半分程の地域に広まっている神楽です。肥後神楽の始まりははっきりとはわかりません。室町時代にはその名称があったとの記録もあり、何百年かの歴史があると推察されます。 肥後神楽は神主神楽ともいい、神社の神主さんたちが、熊本県内の各神社に広め、その神楽がその地区、その神社で現在まで代々引き継がれ、連綿と伝え続けられてきました。 明治、大正、昭和の戦前までは、多くの神社で盛んに舞われていましたが、戦後は後継者不足、資金不足、又保存していこうという意欲の低下等により、県内でもいくつかの神楽保存会が消滅していきました。 最近、日本文化や伝統芸能に対する意識が高まってきており、そのような地区では、廃れてしまった地区の伝統芸能を復活しようとの取りくみも始まってきております。 しかし、一度無くなった伝統芸能を復活するのはなかなか大変です。今ある伝統芸能を、維持保存していくことが大変大事なことでしょう。 当神社の担当している地区は、肥後神楽の伝承地域です。神楽保存会が五団体あります。立福寺神楽保存会、柚木菅原神社神楽保存会、明徳神楽保存会、野出春日神社神楽保存会、大多尾日吉神社神楽保存会の五団体です。 それぞれの保存会は、その地区の氏神社や他の神社に出向き、奉納の神楽を舞っています。伝統芸能である神楽を、神様に奉納し、又後継者不足や活動資金難に苦労しながら、地区の先代から受け継いだ神楽を保存発展させ、後世に伝えています。 皆様も、彼らが伝えている日本の伝統文化、伝統芸能にご理解をいただき、神社での肥後神楽の奉納舞いを是非ご覧下さい。
肥後神楽の内容
肥後神楽は十二座からなります。
- 式神楽(しきかぐら) 神楽の最初に舞う。三座神楽ともいう。
- 真栄木(まさかき) 榊の二人舞。天の岩戸でアメノウズメノミコトが舞われた神話に基づく。
- 剣 弓(けんきゅう) 剣と弓の二人舞。武具を持ち、魔を祓う。
- 二 剣(にけん) 二振りの剣で魔を切り祓う、二人舞。
- 長 幣(ちょうへい) 長い御幣で舞う二人舞い。天の岩戸開きの時、天照大御神に御幣を奉った神話に基づく。
- 宝 剣(ほうけん) 各神社のご神宝の刀で舞う一人舞。神様の御神徳を称え奉る。
- 羽々矢(うはや) 双弓舞、破魔矢舞ともいう。天津神と国津神の円満協和の弓矢の二人舞い。
- 神宣歌(しんせんか) 天地悠久の弥栄を祈る和歌の舞。
- 四 剣(しけん) 永久の平和を祈る四人舞又は八人舞。
- 四方拝(しほうはい) 天地四方、八百万神を拝し、罪穢を祓う、一人舞。
- 国 津(くにつ) 鬼面をつけた鬼神舞。大国主命と神主が問答を交わし、天壌無窮の弥栄を祈る。
- 地 鎮(じちん) 諸災消除の舞。舞納めの神楽舞。一人舞。
神楽保存会紹介
各神楽保存会を紹介します。全ての神楽は、熊本市の無形文化財です。
立福寺(りゅうふくじ)神楽保存会
場所 熊本市立福寺町 神社 立福寺伊邪那岐神社・立福寺菅原神社 会員 大人10名 夜神楽 10月15日熊本市の北部、旧西里地区にあります。 10月15日の秋祭りに夜神楽の奉納があります。 |
柚木菅原神社(ゆのきすがわらじんじゃ)神楽保存会
場所 熊本市硯川町 神社 柚木菅原神社 会員 大人7名 子供7名 夜神楽 10月15日熊本市の北部、旧西里地区にあります。 10月15日の秋祭りに夜神楽の奉納があります。 5年ほど前から、子供神楽も始めています。 |
明徳(めいとく)神楽保存会
場所 熊本市明徳町 神社 明徳熊野座神社 会員 大人6名 夜神楽 11月15日熊本市の北部、旧川上地区にあります。 11月15日に夜神楽の奉納があります。 |
大多尾日吉神社(おおたおひよしじんじゃ)神楽保存会
場所 熊本市河内町大多尾 神社 大多尾日吉神社 会員 大人15人 夜神楽 10月15日熊本市の北西部、熊本市河内町の芳野地区にあります。 10月15日の秋祭りに夜神楽の奉納があります。 |
野出春日神社(のいでかすがじんじゃ)神楽保存会
場所 熊本市河内町野出 神社 野出春日神社 会員 大人15人 子供7人 夜神楽 10月15日熊本市の北西部、熊本市河内町の金峰山の麓、芳野地区にあります。 10月15日の秋祭りに夜神楽の奉納があります。 平成21年に神社の建て替えをしましたが、これを記念して子供神楽を始めました。 |